15章 実生活との接点
https://gyazo.com/82db38b31bfa5440a46dea1862701d4e
15-1. 現実の問題とのかかわり
15-1-1. 目撃証言
アメリカでは記憶の歪みについての実験結果を携えて認知心理学者が法曹界に働きかけてきた→目撃証言の解釈が少しずつ変わりつつある
15-1-2. その他の分野
注意の研究
医療事故
交通事故
高齢者の注意特性
知覚の研究
デザイン
思考や学習の研究
教育現場
15-2. 外国語副作用
15-2-1. 問題の認識
アメリカに留学中に議論ができなくなった
相手の英語が完全に理解できた場合でも、相手の発言に対する考えが何も浮かんでこない
よくできない外国語を使っているときには頭が悪くなる?
15-2-2. 注意の理論
15-2-3. 2つの情報処理
外国語を使っているときには2つの情報処理を同時に行っている 話すときも聴くときも同時に行っている
15-2-4. 理論の適用
母語処理は自動化が進んでいて資源をあまり使わなくて済む
慣れていない外国語処理は資源を大量に使う
外国語処理と思考は資源が足りず干渉はより大きい
干渉のしわ寄せは普通は思考の方に来る
大概の場合、言語処理の方を優先せざるを得ない
15-2-5. 言語と思考
言語と思考は同じ情報処理なのではないか?という疑問
思考=言語は言語相対性仮説の最も極端な考え方
反証が多い
2種類の情報処理は明らかにその内容が異なっている
外国語副作用の「言語処理」:言語そのものの処理 e.g.音声解析、統語解析、文生成
「思考」:特定の言語には縛られない情報処理
15-3. 実験による検証
15-3-1. 実証の必要性
説明にすぎず、必然的に生じるという予測ではない
実際、他の日本人留学生は思考力が低下している実感はないという人も少なくなかった
実証的な研究が必要
15-3-2. 実験のロジック
外国語副作用が本当に生じているかどうかを確かめる
外国語処理と思考を切り離して、前者だけでなく後者も困難になっているかどうかを調べる必要がある
注目するのは思考課題の成績
外国語を使った時に思考課題の成績が低下→外国語副作用が生じていたと結論できる
思考課題では外国語は一切使用していない
15-3-3. 実験の方法
言語課題:テープレコーダーから聞こえてくる常識問題
母語条件と外国語条件
思考課題:加算
隣り合う2桁の数字を加算
母語条件、外国語条件、単独条件(思考課題のみ)
15-3-4. 実験の結果
言語課題は当然母語条件の方が良かった
思考課題の成績:外国語条件は成績が10%ほど低下した
干渉率:単独条件の成績を基準にして、言語課題を同時に行ってどれだけ成績が低下したか
外国語副作用が生じた
この実験では課題を同時に行っていたのは全体の1/3程度
日常生活では言語処理が難しくなる分、外国語副作用も大きくなるに違いない
15-3-5. その他の実験結果
日本に留学していた英語ネイティブを対象に同じ実験
日本人の場合と全く同じになった
様々な思考課題に変えて実験
どの思考課題でも、外国語言語課題を同時に行った場合には成績の低下が大きくなった
思考課題の種類によらず外国語副作用は生じる
外国語副作用の存在が実験的に証明されると、外国語副作用と資源理論との関係が変わってくる
外国語副作用はもはや実験的な事実なので特定の理論に依存しない
資源理論と対立する理論であってもこの実験的な事実は説明しなければならない
もし説明できなければ、その理論の妥当性が疑われる
15-4. 外国語副作用
15-4-1. 現象の正確な理解
外国語副作用について、外国語の難しさと外国語副作用とを混同する批判
外国語不作用は言語処理そのものの困難ではない
関連はあるが、別個の現象
バイリンガルは知的能力が低いという昔の通説と混同し、外国語を学習すると知的能力が低下する現象だと誤解されることがある
思考力の低下は一時的に起こる現象
外国語が十分に熟達し、注意資源の消費量が減れば、外国語副作用は消失する 15-4-2. 社会的な意味
国際会議の公用語
学問
ドイツの心理学誌Psychologische Forschungが1970年代なかばにPsychological Researchにタイトル変更、掲載論文も英語になった
母語が英語以外の人は外国語の難しさによる不利に加えて思考力が低下するというハンディも背負う
外国語が英語の場合、ドイツ人と日本人では、日本人の方が大きくなる
15-4-3. 外国語副作用への対策
作成はともかく、普及が困難
英語を第二公用語
全国民の習熟が困難、英語ができない人が不利になる
コンピュータを使った自動翻訳の技術を実用化すること
最も実現性が高いかもしれない
個人的な対策
英語の学習
この対策は費用・時間の犠牲が大きい
通訳
自分より英語ができなくても構わない
思考のための時間を稼いでくれさえすればよ
英語ができるというのは社会的ステータスになっているので取りづらいこともある
個人が自分で英語を使わなければならない場面
国際学会の研究発表
英文原稿を用意
質疑応答は回答を用意